君への轍
ずっと、あけりは聡に文句を言いたいと思って、機会をうかがっていた。
聡が薫にあけりの初恋の話をしたことを……実は、本気で怒り続けていた。
でも、それを聡に訴えることは、同時に、あけりが薫と逢っていると白状することになってしまう。
さすがに自分から暴露したくはない。
結局、あけりは文句を言えないまま……自転車で颯爽と走って行く聡を、毎週、車の中から恨めしく見ている。
牛蒡みたい……と、悪態をつきながら。
「雨の日でも自転車で走ってるけど……学校でシャワーでも浴びてるの?」
ずっと不思議だったことを、あけりは聞いてみた。
予想外のことを聞かれて、聡は面食らった。
「え……いや?タオル濡らして拭く程度。……夏場はプールの水かぶることもあるけど。」
……やっぱり、ワイルドだ。
「はあ……。聡くん、ほんと、意外。あんなに、坊ちゃん坊ちゃんしてたのにねえ。」
しみじみそう言ったあけりに、聡は首を傾げた。
「いや、でも小学生の頃と同じじゃ成長なさ過ぎやん。……そりゃ年相応にオトナの男になってくのは当たり前じゃない?」
オトナのオトコ……?
何か……生々しいんだけど……その表現。
よりによってピッチリしたレーサーパンツをはいてる状態で……何と言うか……意識しちゃうんだけど……。
恥ずかしそうに目を伏せたあけりの頬がピンク色に染まった。
初々しいあけりの反応が、妙に聡の心を浮き足だたせた。
「……てゆーか、あけりさんも。……守ってあげたい系女の子に変貌してるし。」
聡は自分で言った言葉に、ハッとした。
……守ってあげたい……。
確かに、そんな気になってしまってるかもしれない……。
「……はは……何か……気恥ずかしいわ……こういうの。」
あけりの乾いた笑いに、聡も同じように笑ってみせた。
「はっは……は……僕のほうが恥ずかしいって。昔、あけりさんに振られてるのに。」
「……覚えてない。」
聡の自虐ネタに、あけりはそっぽを向いた。
耳までほんのり赤くしているあけりが、ただただかわいくて……聡は、ちょっと調子に乗って言った。
「じゃあ、今なら?……今の僕なら……あけりさんの答えは、また違った?」
聡が薫にあけりの初恋の話をしたことを……実は、本気で怒り続けていた。
でも、それを聡に訴えることは、同時に、あけりが薫と逢っていると白状することになってしまう。
さすがに自分から暴露したくはない。
結局、あけりは文句を言えないまま……自転車で颯爽と走って行く聡を、毎週、車の中から恨めしく見ている。
牛蒡みたい……と、悪態をつきながら。
「雨の日でも自転車で走ってるけど……学校でシャワーでも浴びてるの?」
ずっと不思議だったことを、あけりは聞いてみた。
予想外のことを聞かれて、聡は面食らった。
「え……いや?タオル濡らして拭く程度。……夏場はプールの水かぶることもあるけど。」
……やっぱり、ワイルドだ。
「はあ……。聡くん、ほんと、意外。あんなに、坊ちゃん坊ちゃんしてたのにねえ。」
しみじみそう言ったあけりに、聡は首を傾げた。
「いや、でも小学生の頃と同じじゃ成長なさ過ぎやん。……そりゃ年相応にオトナの男になってくのは当たり前じゃない?」
オトナのオトコ……?
何か……生々しいんだけど……その表現。
よりによってピッチリしたレーサーパンツをはいてる状態で……何と言うか……意識しちゃうんだけど……。
恥ずかしそうに目を伏せたあけりの頬がピンク色に染まった。
初々しいあけりの反応が、妙に聡の心を浮き足だたせた。
「……てゆーか、あけりさんも。……守ってあげたい系女の子に変貌してるし。」
聡は自分で言った言葉に、ハッとした。
……守ってあげたい……。
確かに、そんな気になってしまってるかもしれない……。
「……はは……何か……気恥ずかしいわ……こういうの。」
あけりの乾いた笑いに、聡も同じように笑ってみせた。
「はっは……は……僕のほうが恥ずかしいって。昔、あけりさんに振られてるのに。」
「……覚えてない。」
聡の自虐ネタに、あけりはそっぽを向いた。
耳までほんのり赤くしているあけりが、ただただかわいくて……聡は、ちょっと調子に乗って言った。
「じゃあ、今なら?……今の僕なら……あけりさんの答えは、また違った?」