君への轍
あけりの持参したコーヒーとお菓子を摘まみながら、女3人でいわゆる「恋バナ」に興じた。

聞けば、徳丸部長にも去年からつきあっている年上の彼氏がいるらしい。


「……じゃあ、神主(かんぬし)さんとおつきあいされてるんですか?」

「神主というか、神職(しんしょく)?……もともと、仲良しの近所のお兄さんだったんだけど、去年、皇學館大学を卒業して、帰って来はってから……そういうことになったかな~……って……。」

「じゃあ、はっちと同い年かも!」

嘉暎子の彼氏の志智甚八もまた、去年大学を卒業して大学院で学んでいる。


部長は苦笑して首を横に振った。

「たぶん違う。あきさん……吉永晃之って言うんやけど……あきさん、1浪2留したから。」

「……。」

嘉暎子は曖昧に笑って1浪2留をスルーして、改めて食いつき気味に部長に尋ねた。

「んー、じゃあ、あけり先輩の、薫さんと同じぐらい?1つ下ぐらいですかねえ。え、結婚の予定とかないんですか?」

「……結婚ねえ……いずれはするんでしょうね。お互いの親もけっこう乗り気だし。……でも、あきさん、ものすごーくおっとりしてるから、どうなることやら。私も、大学を卒業してからのほうがいいしねえ。」

何だか穏やかでまったりした2人のようだ。


……いやいやいや。

「てゆーかさ、まだ高校生なのに……結婚とか、早くない?」

あけりがそう口を挟むと、嘉暎子が不思議そうに首を傾げた。

「……女子は16歳で結婚できますよ?それに、相手はもう充分オトナ年齢なんだし……別に早くないと思う。……あけり先輩、モテるから余裕あるんでしょうけどね……イイ男は早いもん勝ちですよ?他の女に持ってかれないうちに自分のモノにしちゃわないと。」


部長は嘉暎子に同調しつつも、綺麗にまとめた。

「あはは。真理だわ。それ。……でもさ、濱口さんは今、決める必要ないんじゃない?……東口くん?彼、いいよ。絶対、いい。東口くんが社会人になるまで見ていたいかも。」


……どちらにも配慮したコメントに、嘉暎子もあけりも、徳丸部長に対して信頼感を覚えた。

男に対しても、部員に対しても、包容力のある女性のようだ。
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