想いの境界線
2 君の望む今と俺達が願う未来
【side 遥斗】


朝6時…隣の部屋の扉が閉まる音で目が覚める。階段を下りてそのまま家を出て、鍵を掛けていく音に集中する。


いつも通りの時間、いつも通りのアイツの行動にほとほと嫌気が差す。


朝練たって何が何でも早すぎだろうがっ。


俺を避ける行動が徹底してるのは別に構わない。
半年前にアイツを見限ったのは俺だから。
でも、そんな頑なな態度を心配する存在が居る事…分からないとは言わせない‼


沸々と沸き上がる怒りの感情に捕らわれていると玄関が開く音が聞こえ、慌ててベットに横になり目を閉じる。


俺の部屋のドアを思いきり開けながら


「遥斗、起きてっ‼」


大声で呼び掛けても起きない俺に溜め息を吐いて、俺のベットに近付く七緒。
未だ寝たふり続行中の俺を見下ろす七緒の視線を感じる。


そろりと腕を伸ばして七緒に触れようとした瞬間、


「寝顔だけは変わらないのに…」


そう呟いた七緒の言葉に動きが止まる。


…悲しませてんのは…俺も一緒か…


胸がきゅっと締め付けられた瞬間、


「起きなさいって言ってるでしょうがっ‼」


七緒の怒声と共に布団が吹っ飛ばされたのは、いつものこと。


目覚めた俺に「おはよう」と挨拶を交わして部屋から出ていく七緒の後ろ姿を目で追う。


半年前まで俺もバスケ部だったんだから、勿論朝練に参加していた…
辞めたからって、突然朝が弱くなるなんてことは…長年の習慣でないんだよ…


寝たふりしてまで七緒に起こしてもらうのは、七緒が朝一に顔を見るのも、言葉を交わすのも…他の誰でもなく俺であるようにしたいから…


「すっげえー、独占欲…」


一番じゃなくていい…
側に居られるなら、幼馴染みのままの俺でいいなんて…
そう思ってた半年前が嘘みたいだ…


「ごめんな…」


そう独り言を呟いて俺も部屋を出る。
< 10 / 22 >

この作品をシェア

pagetop