想いの境界線
1年の頃は、
3人共同じクラスで、部活仲間や、
共通の友達がいたから、遥斗とは行動を共にすることが多かった。
それが普通だった。


でも、半年前のあの日を境に、
遥斗は俺達の輪から外れた。
いつも一緒だった遥斗の突然の行動と、
髪型や見た目の変化…
小学の頃から続けていたバスケも辞めて、クラスでは一切俺と接触せず、口もきかない。
そんな遥斗の態度に、
俺以外の奴等は、その理由が分からなくて
戸惑っていた。


遥斗からの拒絶…


原因が俺にあると分かっていても、
さすがに辛くて…
どうせ避けられるなら、自分から避けてしまえと、逃げ道を作ったんだ。


あの日から、
遥斗は自分の想いを隠さなくなった。
七緒に対して、
付かず離れずの距離を保っていた遥斗が、今は一番七緒の傍に居る。
2年に進級して、俺だけクラスが離れた。
遥斗を避ければ、必然的に七緒も避けてしまう…


遠くからふたりの様子が目に入り、
仲良さげな雰囲気を見ては、
胸が締め付けられる。


俺とは違う、あまりに真っ直ぐな遥斗。
誰よりも近くて、
誰よりも似ている筈なのに…
どうして、こんなに違うんだろう…?


『信じらんねぇ…有り得ねぇよ、陸斗…
俺の対なのに…俺の対の筈なのにっ‼
そんなことして、虚しくねぇの?
言ったろ?陸斗が真っ直ぐ七緒を想って
るなら、俺は祝福するってっ‼
ふざけんなよっ‼
俺がどんな思いでそう言ったか…
分かんねぇのかよ…』


怒りと哀しみが混じり合った表情の遥斗。
遥斗が声を荒げ、
俺を怒鳴ったのはこれが初めてだった。
肩を震わせ、
俺の襟首をぎゅっと強く掴む両手。
その両手を静かに下ろし、
次に見せた遥斗の表情に、その目の冷たさに息を飲む。


『陸斗に七緒は渡さない』


あの日のことが、頭から離れない。
あの日の遥斗の言葉と視線の冷たさが、
忘れられない。


これからどうすれば良いのかなんて、
今の俺には分かる筈もない。
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