ほしの、おうじさま
でも、それで自身の精神の均衡が保てて、何よりお客様にしっかりとご納得いただけるのだから、「そういった手法はアリかナシか」と問われたら、間違いなく前者だと答えるだろう。

「さて、それじゃあ我々は隣の部屋に戻るとするか」

高橋さんはまごうことなきこの道のプロなんだな…とますます感激が増した私に対し、渡辺さんがそう促して来た。

「マーケティング課の仕事はお問い合わせ窓口対応だけじゃないからね。その他のルーティンワークもしっかりと片付けて行かないと」

「あ、はい。そうですね」

私がコクリと頷いて返答したのを見届けてから、渡辺さんは高橋さんに視線を移して改めて宣言した。

「じゃ、俺達は行きますね。どうもありがとうございました」

「ありがとうございます。とても勉強になりました」

「ん」

私達の声に高橋さんはまたもやそう短く返答した後、サッとパソコンに向き合い、右手でマウスを掴んだ。

保留中だったクレーム処理が無事完了した時点で、すぐさまそのやり取りの内容を入力し、解決済みファイルの方に移しておかなければならないのである。

なので高橋さんはさっそくその処理に取り掛かったのだろう。
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