ほしの、おうじさま
そうこうするうちに夕方となり、派遣の女性が二人、オペレーター室から出て来て渡辺さんのデスクに近付くと遠慮がちに声をかけた。

「私達、今日お茶当番なんです」

「それでこれからカップを洗いに行こうと思っているのですが…」

「あ、星さんに当番の動き方を教えてもらう約束だったんでしだっけ?」

「はい」

「今のところ急を要する業務はないから連れて行ってもらって大丈夫ですよ。よろしく頼みますね」

「分かりました」

「それじゃあ、行きましょうか?」

渡辺さんの言葉を受け、私に視線を向けながら遠慮がちに促して来た女性に私は急いで返答した。

「は、はい。よろしくお願いいたします」

そのまま三人連れ立って給湯室へと向かう。

「私達はもちろん星さんのこと認識してるけど、星さんの方はまだ派遣全員の顔と名前は覚えきれていないですよね?」

「初日に挨拶はしたけど、私達は一気にバババーっと名前を言って行っただけですもんね」

その道すがら、お二人がそう話を振って来た。

「改めて自己紹介しておきますね。私が伊藤で…」
「私が福田です。よろしくお願いします」

「こちらこそ、お願いいたします」
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