ほしの、おうじさま
お互いに挨拶し終えた所でちょうど給湯室にたどり着いた。


「じゃ、まずは皆さんのカップを回収して来ましょう」


そう言いながら伊藤さんがカウンターの右端へと歩を進め、そこに重ねて置いてあったトレイを1枚手に取る。


「これに乗せて運んで下さい。トレイについてはどれがどの課っていうのは決まってないですから。適当に選んで大丈夫です」

「あ、ありがとうございます」


そして遅れて近付いた私に向けてそれを差し出して下さったので、礼を述べつつ受け取った。

再びマーケティング課に戻り、私は正社員の分を、伊藤さん福田さんは派遣さんの分のカップを回収し、給湯室へと引き返す。


「一旦ここに置きましょうか」


流しの横のスペースにお二人がトレイを置いたので、私もそれに倣った。


「それで、まずはここに仕舞ってある二つの洗い桶を取り出しまして…」


伊藤さんは解説しながら流しの下の収納扉を開けると、言葉通り、中にあった水色のプラスチックでできた大きな桶を出し、流しの中に横並びに置いた。


「こんな風にセットしましたら、それぞれの中に自分の課のポットの残り湯を注ぎ入れます。だいたい三分の一くらいの水位になるように」

「もちろんそのままじゃ熱いので、水を足して温度を調節して下さいね。ひとまず今日は私達がやってみせます」

「はい」
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