ほしの、おうじさま
「えっと…」

エキサイトしながらバトルを繰り広げていた私達は遠慮がちに挟まれた星野君の声にハッと我に返り、二人同時に彼に視線を向けた。

「話の論点はちょっと掴めないんだけど…。でも、そんな風に言いたい事を言い合えるなんて、いつの間にか君達ってすごく仲良しになってたんだね」

「はぁ?んな訳あるか!」

「そ、そうだよ!別にこんな人と仲良くなんか…」

微笑ましそうな笑顔を浮かべつつ発せられた言葉に、阿久津君と私は速攻否定したけれど、星野君はますます楽しそうな表情と声音で続けた。

「いやいや、そんな照れなくても良いじゃない。あ。それじゃあ僕、カップを回収して来るから」

言いながら星野君はトレーを手に取り、食器棚をチラ見してから確認して来た。

「二人はもう茶器洗いは済んでるんだね?」

「あ、うん…」

「そっか。じゃあ一緒にはできないね。残念だなぁ」

眉尻を下げてそう言った後、星野君は「それじゃあお疲れ様」と別れの言葉を残し、足早に給湯室を出て行った。

「おい。俺達もとっとと行かないと」

星野君の去って行った方向を未練がましく見つめていた私を阿久津はそう急かして来た。

「もう用は済んだんだからいつまでもここに居る訳にはいかねーだろ」

「…分かってるよ」

そう答えつつ、私はノロノロと歩き出した。
阿久津君もそれに続き、すぐに私の右横に並ぶ。
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