ほしの、おうじさま
って、問題はそこじゃなくて!

「なんで五人囃子なのよ!」

私はようやく引っ掛かりまくっていたその件について突っ込みを入れる事ができた。

「純和風な顔立ちだって事を強調したいんだろうけど、同じ雛壇の中にはお雛様や三人官女だっているのに、何でわざわざ『その他大勢』感が増すキャラクターを引き合いに出すかな?」

「仕方ねーだろ。俺の中でしっくり来たのがそいつらなんだから」

「その中の誰よ!」

「知らねーよ。それぞれの固人名なんか把握してねぇし。とにかくお前は五人囃子のうちの誰かっぽいルックスなんだよ」

「…やっぱりそうなるんだ」

そこで突如私はトーンダウンし、ポツリと呟いた。

「やっぱり私はヒロインやそれに準ずる立場にはなれなくて、あくまでも誰かの引き立て役に甘んじる運命なんだ」

言葉を紡いでいる間に目頭が熱くなり、視界がぼやけて来るのが分かった。

「お、おい」

その様子を見ていた阿久津君はギョッとしながら問いかける。

「何だよ。お前まさか泣いてんの?」

しかし私はそれを無視し、ブラウスの袖で乱暴に目元を拭った。
マスカラだのアイラインだのとは無縁のメイクなので、そういう動作をしても何ら問題はない。

「……泣いてなんかいないよ」

どんなに眼球がびしょ濡れになろうとも、滴が下に零れ落ちなければセーフだもん。

「二人で一緒に戻る必要はないでしょ。私、先に行くから」

そのまま阿久津君と視線を合わせる事なく、私はそう宣言すると、小走りにマーケティング課へと向かった。
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