ほしの、おうじさま
そしてその過程でお祖父様とお祖母様は出会い、立ち塞がる困難を乗り越えて最終的に結ばれた。
なんてロマンティックな人生なんだろう。

「祖父は「祖母の姓を名乗り、この地に骨を埋めたい」と自ら懇願するくらい日本が大好きになり、そして何より家庭を持ち、一人息子、つまり僕の父が産まれたのもあって、もう世界を転々とするのは止めにしたらしい。長い休みの間に、家族で曾祖父母のいるロンドンへ里帰りくらいはしていたらしいけど。だけどその数十年後、奇遇にも、父の仕事の都合で僕と両親は祖父母を日本に残し、イギリスに渡る事になるんだけどね」

「…へぇ~」

「そして、大学受験の為に僕だけ日本に帰って来て、また祖父母と共に生活を始めたんだ」

「そうなんだ~」

星野君が帰国子女であるというのはすでに知っていたけど、そこはあえてしらばっくれた。
自分の個人情報を勝手に把握されているというのはあまり気持ちの良いものじゃないだろうし。

「通勤には何ら差し支えはないし、今も僕は実家住まいなんだけど、未だにラブラブな二人にあてられてるよ。祖父には幾度となく『私やお前の父親がそうだったように、お前も自分の力で生涯の伴侶を見つけ出しなさい』と言われ続けて来た」

お祖父さんだけじゃなく、お父さんも大恋愛の末にお母さんと結ばれたんだ、と思いつつ話に耳を傾ける。
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