ほしの、おうじさま
私のなんちゃってエスパーが発動し、それについて話し合いをしていたんだから。


「っていう流れを、後から隣の席の大橋に教えてもらったんだよ。今ここにいない人に伝えておいてくれって言われたらしくて…」


そこで阿久津君はハッとした表情になった。


「そっか。お前の隣って確か野崎だったよな?」

「え?う、うん」

「きっとわざと伝えなかったんだよ、あの女。お前に嫌がらせする為に」

「あ…」


その言葉を裏付ける、彼女のあの時の言動が瞬時に甦る。


「まぁ、アイツが言わなくたって別の誰かから聞く可能性はあったけど。でもその機会はなく、今日を迎え、結果、お前は一人で焦りまくる羽目になったと。アイツの策略通りになったって訳だ」


……そっか。

つくづく私って、嫌われちゃってたんだな…。


「でもまぁ、それはもう良いや」


しかし私はすぐに気持ちを切り替える。


「とにかく出来うる限り早く、下に下りよう」

「ああ。そうだな」


そうして私達はその場から歩き出した。

本人が嫌がるので肩は貸さず、隣で見守りながら廊下を進み階段を下り、ロビーへと到達する。


「あ、星さん!」


すぐに、私を探していたらしいマーケティング課長より声をかけられた。
< 234 / 241 >

この作品をシェア

pagetop