ほしの、おうじさま
かといって他にこの件を知る人はいないし。
阿久津君に言うしかないんだから。

……阿久津君にこそ、聞いてもらいたいんだから。

そうこうするうちに一階に到着した。
箱を降り、管財課目指して歩を進める。

「今から思えば私にとって星野君は、あくまでも遠くから眺めているだけでいい、「憧れのスター」っていう立ち位置だったんだよね。名前に星が付いてるだけに」

「さりげなく小ネタ挟んでんじゃねーよ」

「無責任にミーハーに、キャーキャー騒いでいるのが楽しいというか。だからお付き合いは断ったの」

「勝手な奴だな」

すると阿久津君は少し厳しい口調で返して来た。

「星野の方は本気だったと思うぞ。真剣にお前に思いを伝えたんだ。その事は忘れるなよ」

「……うん」

「…でもまぁ、ちゃんと断りを入れて、筋は通した訳だからな」

神妙な表情になった私を気遣う為か、阿久津君はすかさずそうフォローした。

『だけど良かった…』

そして更に言葉は続く。

『今回ばかりはとりあえず、アイツにかっさらわれる心配はねぇって事だな』

「え?」

意味が掴めず、私は問い掛けた。

「かっさらわれるって、何を?」

「………えっ」
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