ほしの、おうじさま
彼が登場した瞬間、隣の席の人と顔を見合わせて意味ありげに微笑んだり、顔を赤らめ、キラキラした眼差しで彼をガン見する女子社員の姿を数人確認した。

あちこちキョロキョロできるような状況ではないので、背後に居る人達まではチェックできなかった上に、私の席はステージに近く、つまり視界に入る範囲内にはそれほど多くの人は存在しない。

それなのにそういった人をチラホラと目にしたのだから、全体ではどれだけの数になることか。

いわゆる「統計学」というやつだ。

だけどそれは納得の光景だと思っている。

優秀な学生が挙って挑む0to0の入社試験をトップ通過するほどずば抜けた頭脳の持ち主である上に、見栄えの方も申し分ないのだから。

(推定)180センチ前後の長身に、パッチリ二重で鼻筋がスッと通っていて上下とも適度な厚さの血色の良い唇をしていて、パーツの一つ一つがしっかりはっきりとしているけれどくどさやしつこさなどはなく、絶妙なバランスですっきりと仕上がっている万人受けする甘いマスク。

それを縁取る、センター分けの、サイドを軽く流したサラサラツヤツヤの若干栗色がかっている髪。

最初に会った時からそうだったし、就活中の学生がわざわざその時期にカラーリングする訳がないから、それが彼の生まれつきの頭髪の色なのだろう。
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