ほしの、おうじさま
「そ、そうだよね~。でも、今回は何故だか自然とそういう流れに…」
「それとも、男に対しては意外と積極的だったりするのかしら?」

しどろもどろになりながらも、何とか言い繕おうとした私を野崎さんはピシャリと遮った。

「何か、してやられたなーって感じ。私達が阿久津君の話題で盛り上がってた時、星さん全然興味がなさそうだったのに、陰ではそうやってちゃっかりアプローチを仕掛けてたんだ」

「えっ!?」

想定外過ぎる発言に私は驚愕し、そう声を上げたまま固まってしまった。

「でも、そういうのってすんごく感じ悪いよー。私達は正々堂々、自分の心情をオープンにしてたのに、裏でコソコソ暗躍しちゃってさ」

「い、いや、あの…」
「ま、良いや」

野崎さんは唐突に話を締め括った。

「とにかくそういう訳だから。20分までには戻って来てよ。私はちゃんと伝えたからね」

そしてくるりと踵を返し、小走りに階段を駆け降りて、そのまま去って行ってしまった。
しばし呆然とその場に佇んだ後、ハッと我に返る。
休みが早まったのだからそんなのんびりとはしていられない。
私は一旦会議室に戻り、飲み物をテーブルの上に置いてから今度は化粧室へと向かった。
その際、後方にある予備のテーブルで野崎さんと加藤さんと富樫さんが楽しそうに語らいながら例のデザートを食べている姿が視界に入った。
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