ほしの、おうじさま
用を済ませ、会議室に戻り、席に着いて飲み物のフタを開けていると、野崎さんと富樫さんも自分の席へと戻って来る。
二人はあれこれ会話した後、「そろそろ時間だね」「じゃ」と言い合い、姿勢を正して椅子に座り直した。

「野崎さん…」

そのタイミングで私はおずおずと話し掛ける。

「えっと、さっきはどうもありがとう」

「…は?」

「わざわざ探しに来てくれて」

「別に。課長に指示されたからそうしただけだし」

「それであの、もう一つのお話って何かな?」

富樫さんに対するものとは温度差ありまくりの冷たい声音に内心ドギマギしつつも頑張って続けた。

「さっき何か言いかけたよね?課長からもう1つ伝言があるとかって…」
「ああ…。もし20分までに全員揃わなかったら、その時は半から開始するように係長にお願いしておきますって言ってたのよ。そういう約束だったんだから仕方ないって」

「そうなんだ」

「もう良い?私、係長が来るまで研修資料読んでおきたいんだけど」

「あ、うん」

「普段は無口なくせに、自分がしゃべりたい時だけはグイグイ来るのね、星さんて」

前に向き直りながら野崎さんはそう言い、とどめを刺すようにボソリと呟いた。

「おとなしそうに見えて、結構自己中」
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