それは許される恋…ですか
一服して帰ると話すチズちゃんと別れ、事務所のドアを押して外へ出た。



「はぁ……」


肩の力が抜ける瞬間、やれやれ…と深呼吸を繰り返す。


「今日は何時に帰るのかなぁ」


厚哉のことを思いながらアパートへ向かう。
皆には私がウキウキと上がる時間を待っていたように見えてただろうけど、実はそれは正反対。

確かに退勤時間が近づくと嬉しい。
元々働くことが嫌いな人間だから、拘束時間から解放されるのは嬉しくて仕方のないことだ。


…でも、ここからが本当の拘束みたいなもん。
好きだけど帰りの遅い厚哉を待つだけの時間は、私にとっては退屈で面白味のないもの。



「あーあ」


一緒に暮らし始めた頃は良かった。
厚哉も同じパート勤務だけど、今みたいに不定期な仕事じゃなかったから。


「一緒に食事できる時間に戻ってくれるといいけどな」


同棲しようと決めたのは、いつも一緒にいたかったから。
それなのに、この最近はほぼ全くと言っていいくらいにすれ違ってる。


休みも合わないし、退勤時間も出社時間も違う。
金銭的なゆとりは生まれたけど、だからと言って使える当ても何もない。


(一緒に暮らしだして1年以上にもなるのに何も切り出そうとしてくれないし…)


私は厚哉の何なのかな…と、最近しみじみ考えてしまう。

でも、今更別の人となんて……とも思う。


胸の痛む思いを背に帰る足取りは重く、帰りたくないとすら考えてしまう。


先行き不透明なのが同棲生活の実情。


この先の私たちの将来って、一体どうなるんだろうか……。


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