それは許される恋…ですか
住んでたアパートの近くにある弁当屋で、早朝パートの貼り紙を見つけたのはその帰りだった。
家事も覚えられるついでに社会経験もできると踏んで明香に勧めた。

したこともない仕事の面接に行ってみればと言うと、明らかに「どうして?」という様な表情を見せられる。

「明香の為」と言えばそれまでだけど、それでは返って反感を買う。
家賃や光熱費を折半することにすれば、働かないと生きていけない…という覚悟が生まれる。
最初は採用されなくてもいいから、明香を面接に慣れさせておこうと思った。


履歴書を書かせて付いて行った。
震えて気弱そうに見える明香に、「頑張れ」と抱きしめて送り出した。


事務所に入る背中を見ながら祈った。
どうかいい職場であればいい…と、こっちの方が不安な気持ちで面接が終わるのを待った。


「失礼します」と後ろ向きに出てくる明香に駆け寄り、「どうだった?」と聞いた時の胸の動悸は半端ないくらいに鳴り響いていた。


「なんかよく分からないけど明日から働けることになったみたい…」


ぼんやりとした調子で答えるところを見ると、かなり緊張していたっぽい。
潤みかけてる目元を見たら堪らないほど可愛くなり、「良かったじゃん!」と全身を力強く抱いてやった。

緊張を解すように髪の毛をクシャクシャと揉んだ。


「もう、やめてよー」


明香の唇から溢れる声が、少しだけ弾んでいるように聞こえた。


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