それは許される恋…ですか
店に入るとあのイケメン店長がいて、俺と明香の様子を冷めたような眼差しで見ている。
外面良く早朝勤務を頼んだことを謝ったが、何処となく、いけ好かない奴だと思った。

明香を「桃」と呼び捨てにしているのも気に入らない。
そんなふうに呼び方が変わっているということも、何も聞かされてなかった。


(馴れ馴れしい呼び方しやがって)


ムッとしたまま店を出ると、明香が後を追ってくる。
呼び方が変わっていたことを話してもくれなかった彼女に対し、嫉妬を隠したままで話をしたせいか、妙に態度が冷ややかになってしまった。


店の前に車を横付けた連中が、店内に入っていくのが見えて戻るよう言った。
慌てて走りだした明香の背中に「ごめん」という意味で「頑張れよ」と声をかけた。


あの時もそうだったけど、これまでもきっと、顔を見て話さなければならないことは多かったと思う。
仕事の忙しさと噛み合わない生活の中で、俺は徐々に明香から離れていってたのかもしれない。



それを教えられたのが、その日の夜の出来事だった。

あいつに言われた言葉が、俺と明香にある溝を教えてくれたーー。



< 113 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop