それは許される恋…ですか
「…へぇ。大変ですね。夜中まで」


朝イチから出勤して夜中も働くとは大したもんだ。
感心してやったのに当然の様な顔をしている。


「まぁ、これも会社経営の下調べみたいなもんですから」


会社経営の意味がわからなくて、店のことかな…と思いながら聞き流した。


「それじゃ」

「あ、どうも」


調査を終えたらしい奴は店外へ向かう。
俺はおにぎりコーナーの前で、明香の好きな具がないな…と悩んでいた。

あいつはご飯の中にマヨネーズの味が付いた物は嫌いだ。ベタベタして気持ちが悪いと前に話していたことがある。


(じゃあ何にするか)


自分の分を先に決め、下段の方に目を向けたら、一回り大きなおにぎりが視界に飛び込んできた。
鮭と昆布と高菜……どれも明香が好きな具ばかりだ。


(デカイよな。でも、いいか。これで)


多いと言えば自分が食べてやろうと思い、手にしてレジに向かった。
店を出る時に棚のエンドに置いてあったキャンディー包みにされたチョコレートに気づいたけど。


(…夜中に買うのは止めておこう)


また今度買って帰ろうと思いながら店を出た。
歩き出したところへ後ろから呼び止められた。



「すみません、ちょっといいですか」


さっきの男の声だと気づいて振り返った。
イケメン野郎は、店の横で俺が出てくるのを待っていたらしい。



「何か?」


明香が待っているから早く帰ってやりたいのに…と思いつつ、足を止めた。


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