それは許される恋…ですか
俺にはきちんとした定職もないし金だって持ってない。
明香とのことは真剣に考えているけど、答えを出すのはまだ先のことになるかもしれない。


お互いに我慢をしながら生活をしている。
でも、それは未来を取り零さない為だ。


「振り回してんのはそっちだろ?先のことも決めねぇで同棲なんてするなよ。ガキじゃあるまいし」


ガキと言われてカチンときた。レジ袋を握っている手に力を入れ、殴りかかりそうになるのを堪えた。


「コソコソするのは嫌いだからあんたにも俺の気持ちを伝えておく。俺を選ぶかあんたを選ぶかは桃の判断に任せるけどな」


ギロッと睨むとニヤつく。
イケメン面の奥にあるブラックな性格を見た気がした。


「俺はもう後には引かねぇから。全力で桃に近づく」


真剣な眼差しをして言い渡した。大人の色気や凄まじさに一瞬だけ身を動じる。



「それじゃ」


踵を返した男がコンビニの方へ向かった。
その姿も目で追えず、ぐっと唇を噛み締める。



「…くそっ!」


ジャッとアスファルトの地面を蹴飛ばした。
言いたいことを言われても言い返すこともできない自分が情けない。


俺は明香とのことを考えている。
考えているからこそ、今を我慢しているのに。


「あんな野郎に取られるもんか!」


そう口にしても現実的には難しい。
アイツみたいに大人でもないし、店を経営するだけの手腕も金も持ってない。


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