それは許される恋…ですか
明香を好きだという気持ちだけで、今まで彼女を縛り付けてきた。
明香はそんな俺に、ただ付いてきただけ。
何もない俺の言うままにあの店で働きだして、あの男に調理ができるよう育ててもらったんだ。


俺は明香と家事を分担することしか出来なかった。
働いてる彼女の役割を減らしてやることしか力が尽くせなかった。


何もしてやれる事がない。
情けないばかりで、不甲斐ないんだ、俺は。


それでもいいから明香の側に居たい。
明香がいると思えばこそ、この劣悪な仕事も続けられる。


明香が居なくなったらどうすればいい?
何の為に俺は生きればいいんだ……。




(明香……)



最近のことを思い返してみた。
今日の顔と言い、早朝勤務を決めた時の様子と言い、何処かおかしい感じはしなかったか。


「あの野郎に言い寄られてることも言わないなんて……」


もしかしたら、明香はあいつのことを気にし始めてるのかもしれない。
俺とのことはもう嫌で、あいつと新しく生き直したいと思っているんじゃないのか。


もしも、そうだとしたらどうする。
明香に気持ちを確かめた方がいいんだろうか。


「…んなこと出来るかよ」


明香が俺から離れていく?
そんな未来を考えたこともないのに。


額に手をやって息を零した。
溢れた息が白くて、とにかく帰らなければいけないと気づいた。


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