それは許される恋…ですか
「明日から店長のお母さんと仕事なの」


珍しく仕事が早く終わって帰れば、いきなりそんなことを言われた。
一瞬、頭の中に奴の言葉が浮かんできて、明香に近づくということは親を差し向けるということだったのかと穿った。


「どうして」


顔には出さずに聞き返すだけで精一杯だった。
明香は俺に今朝店であった出来事を言い始めた。

イケメンが火傷を負ったと聞き、心の狭い俺は（ザマミロ）と考えた。
「痛そうだったのよ」と心配する明香の気持ちも深読みせず、当然だろうと言葉を返した。


「そんな単純なことじゃないよ！」


怒ったように言い返してきた明香の顔を見つめ、何かが変化し始めているのを実感した。


明香はやっぱりあいつのことが好きになり始めてんのかもしれない。

多分きっとそうなんだろうと思う。
だからこそ、こんなに必死に奴のことを庇うんだ。


（だったら俺はどうしてやるのがいいんだよ）


心が変わり始めた明香を振り向かせる自信も持てない。
昨夜考えたように自由な選択を彼女にしてもらった方がいいんだろうか。


「別に。好きにすればいいってこと」


あいつを選んでも仕方ない気がするから発した言葉。
明香を幸せにできるのは俺ではないのかもしれない。


呼び止める明香と向き合わずに風呂に入った。
ヤケのように缶ビールを煽り、早々にベッドの中に潜り込む。

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