それは許される恋…ですか
家賃も光熱費も食費も折半し合うことで現実を突きつけられた。

自分という人間を飾らずに、有りのままの生活を受け入れられるかどうかを試された。
例えばそれがどんな惨めで辛くてもいいのかどうか。言いだした厚哉でさえもきっと気が気ではなかった筈だ。


(それでも一緒に居たいと思ったの。私は……)


彼が私を呼び止めてくれたように、私もきっと彼に呼び止められたかった。

彼に「待て」と言って欲しかったし、「俺がいる」と言われた時、スゴく嬉しくて仕方なかった。


両親に会いに行ってくれるとは思わなかった。
父にどんな罵声を浴びせられても、ぐっと堪えている姿が頼もしかった。

一緒に住みだしてからも、私がすることを心配そうに見守り続けていた。
失敗する度に励まして、上手くできれば手放しで喜んで笑ってくれた。


厚哉の笑顔が見たいから頑張り続けた。
自分の為じゃなく、厚哉を心から喜ばせたかったから。


いつも頭の中心にあるのは彼だった。
これからだってずっと、そうであり続けたい……。



カチャンと鍵のロックを開け、ドアを引っ張り開けられた。
「どうぞ」と声をかけた人の顔を確かめ、先に玄関に入る。

見慣れた光景なのに何処か違う雰囲気がしてドキドキした。
厚哉と一緒に立ったのは久しぶりで、まるで初めての日に戻ったような錯覚があった。



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