それは許される恋…ですか
後ろから入って来た人の邪魔にならないように手にしていた袋を避けた。
ブーツを脱いで上がろうとしたら、ぎゅっと肩を掴まれてしまう。

胸が弾んで振り返ると、唇の端を結んでいる厚哉と目が合い、その目線を逸らさずに見つめ返した。


彼が何も言い出さないから私が唇を動かした。


「どうしたの?」


そう聞いたら、「いや…」と言葉を濁す。
離そうともしない手を感じながら、厚哉が何かを迷っているんだ…と思った。

何かが分からず、当たり障りの無い言葉を囁いた。


「今日は早かったのね」


雪が積もり始めていたから心配だった。晩ご飯を一緒に食べれる時間に帰ってきたことが何よりも嬉しい。


「話があるから早目に帰ろうと思って」


そう言いながら手が離れた。
「上がってからにしよう」と言う彼に合わせ、ブーツを脱ぎ始める。
足が引っ掛かって転びそうになるのをさり気なく支えてくれる。

「ありがとう…」と振り向いてお礼を言うと口元が少しだけ綻ぶ。
厚哉が何を話したいのかは気になるけど、敢えて聞こうともせずに奥へ向かった。


「あったかいものでも淹れるね」


エアコンを点けてキッチンの流しに立った。電気ポットの湯が沸いたらハーブティーを淹れようと思い、ティーパックの箱を手に取る。


「今はいい。それよりも話がしたい」



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