それは許される恋…ですか
お互いの存在が見えなくなってる。
一緒に住んでいるのに空気みたいに思えてしまっている。


「私はもっと厚哉に触れて欲しいのに、厚哉は私を無視してる!」


「してない!」


ムキになって言い返す厚哉を睨み付けた。お互いに一歩も譲らずに見つめ合った。


「明香が思う以上には見てるよ!ただ、見えてなかったこともあるのは認める。俺が意地を張り過ぎてたんだ。そのせいで、明香の心に隙を作ってしまった。その隙を漬け込まれそうになった。一番大事な女に手を出されそうになった!」


「一番大事な女」だという言葉に震える。
今もそんなふうに厚哉が思ってくれてるんだと知った。


「明香を必要としてるのは俺なんだ!明香が居るからあの会社でバカみたいに働ける!居なかったら目標も何もない!幸せにしたいと思うからこそ働き甲斐もある!将来もずっと明香と共に居たいから、今を我慢しているだけだ!」


我慢という言葉の中に込められた厚哉の思いが切なく聞こえる。
そんなことをしなくてもいいから側で笑ってて欲しかったのに……。




「……バカだよ。厚哉は…」


ポロッと涙が流れ落ちた。
バカだよ…と言いながら自分も同じだと思う。


「先のことばかり考えて…今一緒に居なくていつ幸せになれるの?私は厚哉と今一緒に居たいのに、誰にも向かないくらい触れ合って確かめて欲しいのに……どんなに私が厚哉のことを好きか知ってる?どれくらい厚哉のことしか考えてないか知らないの!?」


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