それは許される恋…ですか
パリン、パリン…と道路に張り付いた氷を踏みながら歩く。
いつもなら走る道程をゆっくりと噛みしめるように進んだ。

見慣れた朝の景色がいつもよりも清々しい。
体の奥から熱を吐き出すように息を吐けば、冷たい空気が体の中に入り込んでくる。


デイリーキッチンが近づき緊張が走る。
昨日のことが頭に浮かび、どんな顔をして白瀬さんに会えばいいのか…と迷った。


ドキドキしながら角を曲がり、店の先にあるドアを見つめる。

事務所のドアに付いてるシャッターは上がってる。
私よりも先にお母さんが到着してるんだ。



(大変!急がないと…!)


昨日の今日ではわからないことの方が多いはず。
今朝は白瀬さんも来ないと言ってたから、1人ではきっと戸惑ってる。


走りだして事務所に続くドアを開けた。
入って直ぐの場所にあるデスクに白瀬さんの姿が見えなくてホッとする。



「良かった…」


声に出しながら初めてこの事務所に入った日のことを思い出した。
初対面で会った時の店長は、怖そうで冷たい人のように見えた。



(本当に怖かったけど…)


タイムカードを差し込みながらクスッと笑いが浮かぶ。

口元に笑みを浮かべたままマフラーとコートを脱いで、店のユニフォームにあたるバンダナとエプロンを身に付ける。
エプロンの紐を結んだ時に、キィ…とドアの開く音がしてビクついた。


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