それは許される恋…ですか
一瞬目の合った私を見て、白瀬さんの表情が歪む。
その顔から直ぐに目を逸らせ、後ろを向きながら言った。


「行きます」


歩きだした私の胸には迷いはなかった。
白瀬さんとの触れ合いも忘れ、これからの時間を厚哉と一緒に進もうと思う。


この店で出会った上司は最高にいい人だった。
何も出来ないど素人の私を一から叩き上げて、仕事を任せて貰えるほどの人材に育ててくれた。


そんな人には私以外の人が必ずと言っていい程現れる。
私には勿体無いほどの人だから、きっと周りからも望まれる結婚が出来る筈だ。


(私達だっていつかは…)


厨房のドアを開けながら想像した。
次にドアを開ける時が来たら、絶対に誰からも許されるようにしよう。


満遍なくでもいいからきっと。
せめて、両親からは祝福されたい。




「おはようございまーす!」


大きな声で挨拶をした。
新しい日々の始まりに、胸が踊り出してくるようだった……。




END



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