それは許される恋…ですか
(これだから鬼のやることは嫌なのよ。手当てのつもりでやるんだろうけど、荒療治もいいところ)


「ほら、これ握っとけ」


水道で濡れた手を握り、自分が押し付けてきた保冷剤を手渡す。
顔も手もこの最近厚哉以外には触れられたことがない。
なのに、この男は平気で私に触れる。


「ど…どうも……」


相手は自分の責任だと思っているだけ。
だから、触れたとしても他意はない。


(ないんだとわかってるけど嫌だーー)


今日こそは厚哉に触れてもらおう。
白瀬さんの手が触れた場所全部を、彼の手で触れ直してもらうんだ。

絶対に!…と決め込んだところで仕事を続ける。
手仕込みのハンバーグは好評で、あっという間に売り切れてしまった。



「明香さん、休憩どうぞ〜」


お昼の繁盛ぶりが一段落つき、調理場を替わります…とチズちゃんが来た。


「ごめんね、ヨロシク」


厨房の裏口から事務所へと回り、自分用のロッカーからお弁当箱を取り出したところへ店長が来た。



「休みか」


どうやら自分も休むらしく、手には山盛りのカレーライスを持っている。


「…はい。まぁ」


今日に限って2人だけとはあんまりだ。
一度に大勢が逃げれない厨房勤務では、仕方ないと言えばそうだけど。



「食えよ。時間無くなるぞ」


6時間パートだから休憩時間は30分だけと決まってる。

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