それは許される恋…ですか
「何の宣言ですか」


バカみたい…と口には出さず、心の中で呟いた。


「俺は食について正論を言ってるだけだ。そんな食べ残すような男に縋って何になる。もっと選択肢を増やせよ。いろんな男を知った方がいいぞ」

「いーえ、厚哉だけ知ってればいいです」


その1人の気持ちですらうまく掴みきれずにいるのに、どうして他の人まで選択肢に加えなきゃいけないんだ。


「そう言わずに1人加えろ」

「はっ?誰を?」

「俺」

「えっ?」

「俺がお前の選択肢の一人に立候補してやる。そんな食い物を粗末にする奴なんて許せない」

「えーと…」

「俺のことも見ろよ。こっちはずっとお前を見てたんだから」


「…………」


白瀬さんの言葉に瞬間頭が真っ白になった。
何かの聞き間違いかもしれないと声をかけようかとしたけど、さっさと食べ終えて立ち上がられてしまった。


「考えとけよ」


イケメンが仏頂面で逃げていく。



「ーーーーえっ」


姿が見えなくなってから声を発した。
それから徐ろに箸を動かし、味なんて全くしないで食べきる。




「ご馳走様」


そう呟く自分の脳裏に浮かんだのは、若干照れくさそうにしていた白瀬さんの顔ーーーー


(あの鬼、もしかして私の煮たジャガイモに当たったの?)


彼氏のいる私の選択肢に立候補するとか何とか言ってたようだけど。


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