それは許される恋…ですか
その後で顔を洗いに洗面所へ行き、これまた痺れるくらいに冷たい水で顔を洗う。


(この時期の早朝勤務だけはしたくなかった…)


洗顔フォームを洗い落とすのに水だけだとやれない。
しようがなくガスを使ってお湯を出すけど、水がお湯になるまでの時間が長い。

やっと温水が出始めた頃にはフォームはほぼ流れきってる。
仕上げのすすぎをお湯でした後、今度は保水をしておかないと乾燥が進む。


(それでなくても乾燥肌なのに…)


化粧水をたっぷり染み込ませているような時間はない。
適当に叩いてから美容液成分入りの保湿クリームをメイクの下地代わりに塗り込む。


「大変!急がないと!」


パウダーファンデーションをブラシに付けて顔に乗せる。
早朝勤務の時は接客をしないから、後はチークとルージュだけで済ます。


(アイメイクしないとほぼスッピンに近いなぁ)


二重で良かったと思う瞬間。これで一重だと目が寂し過ぎる。



「厚哉、行ってくるね」


いつの間にか向きを変えているから耳元に声をかけた。
唇に掠った耳たぶが冷たくて、擦り寄って温めたくなってしまう。


(……朝ご飯も作れなくてゴメンね)


早朝勤務をしている頃、厚哉は朝食の支度はしなくていいと言った。

昨夜も朝はパンを齧っていくから気にするな…と言い、今朝はそれに甘えさせてもらった。


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