それは許される恋…ですか
(明日はレンジで温めればいいだけの物を用意しよう)


それの準備は今夜のうちにやっておけばいい。
私の朝ご飯は店で出るからいいけど、厚哉に毎朝パンだけというのは遣る瀬無い。


そう決めてアパートの部屋を出た。
6時前の空はまだ暗くて、夜の世界が広がってる。


「寒っ…」


凍てつく空気の中を走り出した。
顔や腿に当たる北寄りの風が冷た過ぎて、店に着く頃には頬の筋肉が強張り、表情も作りにくくなってしまう。




「おっ、すまん。早いな」


事務所の鍵を開けようとしている白瀬さんと店の前でバッタリと出くわした。


「いえ、おはようございます」


白い息を吐き出しながら挨拶をする。


「真っ白だな」


可笑しそうに笑いを噛み締める白瀬さんは、その顔を崩さずに付け加えた。


「彼氏には悪いけど俺はちょっと嬉しいよ」


私と2人だけの早朝勤務。
いつもなら小杉さんと男2人だけでするから…という意味もあるんだろうけど。

ドキン…とくる様なセリフを平気で吐かれて口籠った。
その白瀬さんの言葉に対する私の反応は正しくなかったと思う。



「ほら、先に入れ」


ドアを開けられて促される。
初めての面接の時と同じように、ドキドキ…と胸を震わせながらドアの奥に入った。


事務所の机上にあるタイムカードに手を伸ばして差し込む。
7:52の並んだ下に6:53の数字が刻まれた。


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