それは許される恋…ですか
「お前の行動は朝から目の毒だな」


何を想像したのか知らないけど、白瀬さんはそう言ったきり背中を向けた。


(何よ。自分から疑ってきたくせに)


調理中は無駄口を叩くなと言われてきてる。だから私は言いたくても言い返せないでいた。


白瀬さんはコンロに向かい、幕の内用の惣菜を温め直した。
その間に私は幕の内用のトレイを厨房の作業台に並べて置く。
この店では店長のこだわりが詰まった幕の内弁当が人気。1日100食は必ず売れる。


「今日は子供用のも作るからな」


近所の保育園から注文があったらしい。
大人向けと違って、子供用のは小さくて楕円形のトレイを使う。


「中身は何にするんですか?」


ワクワクする気持ちを抑えきれずに聞いた。
白瀬さんは厨房のコンロ側に貼られたメモを剥がし、私の方に向けてくれた。

ミートボールと卵焼きはほぼ定番のメニュー。そこに特製のタレに漬け込んだ唐揚げとミニカップグラタンを入れるようになっている。


「緑のおかずは何にするんです?」


色合いを考えながら聞くと、白瀬さんは少し迷っている様な言い方をした。


「ガキは緑色の野菜が嫌いだからな、今日はミックスベジタブルを混ぜた卵焼きにしようかと思うんだけど」

「いいじゃないですか。ピーマンとかキューリとか、青臭いものは嫌う子も多いからグーかも」


メモを返しながら相槌を打つ。

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