それは許される恋…ですか
開店までの1時間で幕の内を20食分ほど用意した後、朝イチで炊き上がったご飯に塩を混ぜておにぎり型に入れ込んでいく。
梅干しとおかかと鮭の身をほぐして乗せ、高菜漬けも刻んで乗せる。
その上からご飯を乗せて押さえるだけ。後は型を外せばキレイな三角形のおにぎりが出来上がる。


(美味しそうー)


『ググ〜〜ッ…』と響くお腹の音に気づかれて振り向かれた。
鋭い視線が突き刺さり、ギクッとした途端、白瀬さんの目が細くなった。


「桃はいつもこのタイミングで腹が減るんだよな」


ブハッと吹き出されてしまった。
確かにこのタイミングでお腹が鳴ることは多かったけどーー。


「笑わないで下さい!久しぶりに早起きしたせいです!」


さっき仕事前に飲んだカフェオレのせいもある。
変にお腹に入れた水分のおかげで、胃袋が余計な活動を始めたんだ。


「開店までもう少し我慢しろよ。開けたら直ぐに飯にしてやる」


白瀬さんはそう言って微笑み、くるっと背中を向ける。
私は朝からイケメンの笑顔を見せられて、ドキンと胸が弾んだ。



(ダメダメ。ときめいてる場合じゃない)


午前7時までにはやることが他にもある。
粗方の料理の準備ができたらレジに小銭を入れたり、カウンターの掃除やレジ袋も用意しなくちゃいけない。

開店の5分前にはシャッターを開ける。
開けたら大抵と言っていいほど常連さんが立ってるから、勤め始めた頃はいつもギクリとさせられてた。


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