それは許される恋…ですか
私が早朝勤務してた頃も彼が朝から店に来ることはなかったのにーー。


「お弁当買うの?何にする?」


嬉しくなって聞くと、「明香の作った物は何?」と聞かれた。


「おにぎりと散らし寿司くらいかな」


幕の内弁当は詰めただけ。
おかずは全部店長のアイデアで、昨日の後半パートさん達が調理したものだ。


「じゃあ、おにぎりでいい。梅干し以外のやつ」

「待ってて。直ぐに準備する!」


持っていた箒と塵取りを道端に避けて店内に入る。
接客をしていた白瀬さんが驚き、脇をすり抜ける私を目で追う。


「何だ?」


いそいそとおにぎりを袋に入れる私に近寄り声をかけてきた。ハッとした私は振り返り、言いにくそうに返事をした。


「彼がおにぎりを買いに来たんです」


言ってる側から厚哉が店内にやって来た。
昨夜寝る前に見たスウェットじゃなくて、きちんとしたシャツとズボンを着た上からパーカーを羽織っている。


「お待たせ♡」


自分としては語尾にハートを付けるような気持ちで発声した。
おにぎりの入った袋を手渡された厚哉は、無言で口元を緩ませる。


(笑った!)


厚哉に微笑まれただけで天にも昇るような嬉しさがあった。
後にも先にも店に来てくれたことが何より一番嬉しい。


「いくら?」


値段を聞かれてそうだ…と気づく。レジを打とうとしたら既に店長の白瀬さんが先回りをしていた。


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