それは許される恋…ですか
「何でもないで泣くのか?」


そう言われても、何が何だか自分でも不思議でならない。


「彼氏と上手くいってないのか?」


どうしてそんな発想になるんだ。


「上手くいってないことないです」


上手くいってます…とは言えない。
この最近はすれ違いも多くて、触れ合いすらも少ないから。


「それじゃ何で泣くんだ」

「わかりません……でも、急に不安になって……」


厚哉の態度が気になって仕様がない。
彼が私に触れないのは、私以外の誰かと定期的に触れ合ってるからじゃないのか。
その誰かとは正社員で、仕事も有能で上司からの信頼も厚いんじゃないのか。


「不安?何が?」

「そんなの…店長には関係な……い…」


私の言葉を遮るように白瀬さんは肩を抱いた。
トン…と鎖骨の辺りに額が触れて、ポン…と後ろ頭を押さえられる。


「関係ないなら店で泣くな」


そんなのわかってる。
私だって好きで落ち込んでる訳じゃない。


「うっ…」と声が漏れた。
白瀬さんはぎゅっと肩を抱く腕に力を込め、「今だけでいいから泣け」と言った。


今だけ泣いたら何かが変わるのかと思う。
きっと何も変わりはしないのに、やはり泣き出したら止まらなくなった。


最初は何とか声を殺していた。
でも、白瀬さんの声が聞こえてきて……


「桃が好きだ…。ずっと見てきた……」


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