それは許される恋…ですか
手を洗わせてもらい、白瀬さんのいる調理場へ向かう。
私の姿を黙認した白瀬さんは、中華鍋を手渡して指示した。


「焼きそば3人前頼む。いいか?」

「はい」


真剣そうな目で聞かれ、ピリッと電流のような緊張が走った。
ここは今戦争の様な忙しさが漂ってる。
ぼうっとした状態で火を扱えば大変なことになる。


(頑張らないと)


腹を括るとやる気になれた。
厚哉から言われた「頑張れよ」の言葉にも、背中を押されてる気がした。


黙々と淡々と調理を始め、次から次へと叫ばれる注文に応じたものを作る。
1時間くらいは経ったかな…と思う頃、「休憩して下さい」と声をかけられホッとした。


「替わりま〜す」


チズちゃんが私の代役を務め、白瀬さんの代役は他のパートさんがする。
忙しい合間を縫って作られた賄い用の混ぜ飯と唐揚げ、それに千切りキャベツを盛って休憩スペースへ移動する。


「ふぅ…」


さすがに疲れた様子を見せた白瀬さんからは、いつもみたいな鬼の雰囲気は感じ取れない。


「すみませんでした。忙しい時間に抜けて」


泣いた後でがむしゃらに仕事をしてたせいか、こっちも少し気が抜けてる。


「本当にもう大丈夫なのか?」


背凭れに凭れ込んだままの体勢で確認され、皺の寄った黒いエプロンの前だけを見て「大丈夫です」と頷いた。


「食べましょう。お昼」


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