それは許される恋…ですか
軽い目眩を覚えながら答えると、ポソリと呟く声が聞こえた。


「どシロウトか」


素人に『ド』まで付けられる私のレベルというのは何だ。
確かに実家では米を研ぐ程度のことしかしてないし、調理実習からも離れて長い。
母はキッチンに立つことだけが生き甲斐の専業主婦だから料理を代わって…とも頼まない。


(そんな言い方をするからには、この人は絶対に調理が得意中の得意なんだろうな…)


そう思いながら彼の顔を窺う。
店長と言うからにはおじさんかと思いきや、意外にも雰囲気は30代前半といったところ。


頭の髪をすっぽりと包んでいるのは黒のバンダナ。
その端のラインはおでこの上部に掛かり、キリッと伸びた眉は太過ぎもせずに真っ直ぐと目尻に向かって生えている。
履歴書に落とされた目線は少し細く、まつ毛の量も少なくて薄い。

鼻筋は少しだけ短くて、その分小鼻が大きく見える。
唇は上が薄くて下が厚め。
でも、それは少しだけ唇を噛んでいるせいかもしれない。


「採用されたら何時間働けますか?」


迷っていた様に見えた人が、真っ直ぐと目をこちらに向けた。
鋭そうな視線にビクつき、オタオタ…と彼を見ていた自分の格好を取り繕う。


「ぼ…募集時間通りに働けます」

「いつから」

「そ…うですね、…来週……ではなく、明日からでもいいです」


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