それは許される恋…ですか
『体に気をつけて下さい』


『母より』の文字に涙が溢れる。
親を心配しかさせない私の恋は、多分誰にも許されないから幸せじゃないんだ……。



「…ぐっ…っう…」


泣くなと言い聞かせても涙は溢れる。
母の作ってくれた物を厚哉に出せば、味が違うからどうしたのかと聞かれる筈だ。

自分だけ先に夕食として食べよう。
残った分は弁当にして、明日仕事場で食べればいい。


厚哉の分だけ…と思いながらミネストローネを作ろうと決めた。
少し多めに作り、明日の朝レンジで温め直して食べて…と言おう。

洗濯物をたたんで弁当屋で使ったエプロンとバンダナを洗う。
それを洗っている間に掃除機をかけていたら疲れてしまい、少しだけ…のつもりでベッドへと潜り込んだ。


(1時間だけ寝よう…)


そう頭の中で決めていたのに、泣いた後のせいか熟睡してしまった。
カチャン…と金属の音がして目を覚まし、ぼぅっと微睡みながらスマホを手にする。


(うそっ!10時!?)


ガバッと起き上がってみれば厚哉がキッチンのシンクの前に居て、驚いた様な顔をして振り返ってる。



「どうした?」


聞かれて何と言えばいいのかわからず、「つい寝過ごしたの…」と囁いた。


「ごめんなさい。急な勤務変更で疲れてたみたいで…」


言い訳しながら謝った。
厚哉は無理もないという感じで、パタッと冷蔵庫のドアを開けた。


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