それは許される恋…ですか
「あっ…!」


今開けられたらマズい。母のくれた惣菜が入ってる。
急いでベッドを下りて近付くと、ドアの中に向いていた目が向きを変えた。


「おかずはできてるじゃん」


感心したような笑みを見せられ、「あの…」と小さく肩を竦める。


「それ…お母さんが作ってきたの。お昼に家に帰ってきたら部屋の前に父と居て……」


『父』と聞いた厚哉の顔が引き締まる。
私と暮らさせて欲しいと頼んだ時の激昂ぶりを思い出したんだと思う。


「私の好きな物ばかりしかないの。厚哉の口には合わないと思うから…」


別な物を急いで作ると話せば、彼は「何で?」と聞き返す。


「これだけあるんだから作らなくてもいい。明香のお母さんがくれた物を食べよう」


ほらほら…とタッパを出されていく。
ポテトサラダも栗の甘煮もそれからサンマの蒲焼きもひじきの炒り煮も。


「和食ばかりだな」

「お母さんの得意料理なの」


ごめんね…と謝るとくしゃっと髪のてっぺんを揉まれる。
それをされると和んで、気持ちが優しくなるから好きだ。


「明香は気にし過ぎる。親のことで悪いと思うのは俺もなんだから、そんなふうに構えなくもいい」


今日は何だか優しい気がする。
私が疲れてるから気を遣ってるのかもしれない。


「ご飯炊けてないの」

「じゃあ買ってくるか」

「何処で?」

「コンビニ」


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