それは許される恋…ですか
(厚哉……早く帰って来て……)


イライラしながら部屋の前とキッチンを行き来する。
出掛けてから45分くらいして、ようやく彼の姿が見えてきた。


「厚哉…!」


崩れるように走ってしがみ付いた。
しがみ付かれた厚哉の方は、声も出ない程の驚きようで抱き留める。


「遅い!何してたの!」


怒り口調になって見上げる。
ぽかんとした顔の彼は「ごめん」と凹凸のない声を出した。


「明香の好きな具が無くて迷ってた。シーチキンとか照りマヨとか嫌いだろう?それで何ならいいかなと思って…」

「そんなの何でもいいよ!厚哉が選んでくれた物なら何でもいい!」


私はどんな嫌いな物でも厚哉が居ればいい。厚哉が居れば味なんて関係ないんだから。


「そんなこと言って文句言われんのヤダし。ちゃんと考えた末にコレにしたんだ」


袋から出されたのは三種類の具が入った大きな物。


「これだと明香の好きな具ばかりだろう?」


普通サイズのおにぎりの2個分はありそうな物を夜中に見せられて戸惑う。
母の作ってくれた料理もあるのに、その大きさの物を食べろと言うのか。


「もうっ…厚哉は……!」


ポコンと胸板を拳で叩いた。
一度叩くと腹が立ってきて、ポコポコと軽く何度かぶつけた。


「バカ!マヌケ!」


口悪く罵ったのに厚哉は怒りもせずに「やめろ」と言う。


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