それは許される恋…ですか
離して!と腕を前に押して逃げる。
サッと事務所の中に入り、警戒心丸出しのネコのように振り返った。


「今と同じことしたら明日からは出勤しません!」


言い渡してからタイムカードを押した。
昨日の5:53の下に5:55の数字が印字される。


「あーもうー」


同じ数字が並ぶように仕事場へ来てるのに残念。
私にハグを禁じられた白瀬さんは、「チッ」と小さく舌を打ってから中に入ってきた。


「俺は引き下がらないと言ったろ。お前がどんなに嫌がってもこの状況を利用する」


「男と2人だけの早朝勤務」と言ったチズちゃんの声が蘇った。
真顔で見つめる白瀬さんのことを振り返らず、ロッカーへと急ぐ。


「桃…」


ぱっぱとコートを脱いでバンダナとエプロンを身に付けた白瀬さんが厨房に向かいながら呼んだ。
返事も返さずに振り返ると、今日はチョコレートを投げられた。


「昨日コンビニで買ったんだ。美味いぞ、それ」


丸くてキャンディー包みにされたチョコレート。
前に厚哉が買ってきてくれたことがあるやつと同じだ。


思い出して少し笑みが溢れた。
白瀬さんは私が笑みを浮かべた理由をきっと勘違いしたんだろうと思う。


「食べてから来ていいぞ」


機嫌よく言い渡すと、先に厨房へ向かった。
私はそのチョコレートを食べずにロッカーの中にしまい込んだ。

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