それは許される恋…ですか
ぎゅっと手を握って隠されてしまった。
目を向ける私の視線は無視して、白瀬さんは平気で立ち上がった。


「手当ては後でいい。それよりも先に店を開ける準備をしよう」


フライヤーに火を点けようとした時に軽い爆発が起こった理由は謎のままだ。
ガス漏れの様な臭いもしないから大事には至らないだろうけど、念の為落ち着くまでは使わないでおこうと白瀬さんは決めた。


「悪いけど煮上がった惣菜の鍋を裏に出して冷ましてくれ。粗熱が取れたら盛り付けていい。用意するのはいつもの半分の量にしておこう。寿司よりも先におにぎりを作れ。それの方が先に売れ出す」

「はい!」


的確な指示を出しながら、白瀬さんは片手でできることを続ける。
時々痛そうにしながらも、それを声に出さずに動いた。



「開けまーす!」


7時に2分ほど過ぎたけど開店はできた。
昨日と同じように常連さんが数人店の前で待ってる。


「おはようございます!」


ハラハラする気持ちを抑えながら声をかける。
今日は掃除もせずに直ぐに店の中に戻った。

お客さんの注文を聞いて作って包装して会計もする。
私が1人でするもんだから「店長は?」と聞かれた。


「只今負傷中でーす」


にっこり笑って答える。本当はそんなふうに笑える状況ではないけど心配もさせれない。

白瀬さんにはある程度の準備が出来たところで手を冷やしに行って下さい…と伝えた。

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