それは許される恋…ですか
お母さんは弁当を見ながら簡単に絵で書き取った。
次からは自分でできるようになるつもりらしく、勉強熱心な人のようだ。


「お待たせしました」


一番乗りの人に比べたら幾分小さな声になってしまう。厚哉の顔も見れず、直ぐにコンロの方へと向きを変えた。


「今回はご迷惑をかけ続けてます」


店長の謝る声に「いえ」と小さく返す。
その声が怖そうに思えて、ぎゅっと唇を噛みしめた。

ピポピポーン!と鳴るインターホンの音を聞き、厚哉が出て行こうとしてるんだと気づいた。
ビクッとなったけど振り向けなかった。


「ありがとうございました!」

2人と同じようにお礼も言えず押し黙った。
折角明るくなり始めた気持ちが逆戻りしていく。自分の態度がそうさせてるのに、厚哉が店に来たせいだと感じた。



「桃山さん」


店長の母親の声がして振り返る。
カウンターの所にいる白瀬さんが、私を見ているような気がしてならない。


「大丈夫?顔色が良くないけど」


そう言われてハッとしながら「平気です」と伝えた。


「今日寒いからですよ、きっと」


厚哉がどんな服装で来てたのかも見てなかった。
あったかい格好をして仕事に行けばいいけど…と願う。


今朝は寒いせいか、常連のお客さん達もあまり来ない。
開店から30分もしないうちに一段落がつき始め、早目の朝ご飯にしようということになった。


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