それは許される恋…ですか
「今朝は私が作るわ」


料理が好きらしいお母さんは、さっさと手を洗って卵を割る。


「寒いから卵丼にしましょう」


手際よく切った玉ねぎと人参を鍋に入れ、出汁を調味して煮る。
火が通ったところで卵を3分の2ほど流し入れ、煮上がる直前に残りを入れて火を止めた。


「こうすると後から入れた方がトロトロで美味しいのよ」


仕事は教えて貰ってばかりになるから…と言い訳して、料理のワンポイントを授けてくれる。
丼にご飯を注ぎ、煮上がった卵を乗せる。


「これに小口に切った小ネギと刻み海苔を乗せるの。好みで山椒や一味を掛けても美味しいのよ。…はい、どうぞ」


私と白瀬さんの前に出された丼。優しい湯気が上って色合いも綺麗で美味しそうだ。


「頂きます!」


箸を持ったまま手を合わせて丼を持ち上げる。
プルプルしている卵の間に箸を差し込み、パクッと口に入れて頬張った。



「美味しいー!」


目を見張りながら声を出すと、お母さんが嬉しそうに笑った。


「懐かしい味だな」


隣で食べてる人も声を漏らす。独り暮らしだと聞いてるから久し振りに手料理を食べたんだろうと思う。


「弦ちゃんは好きだったもんね」


ちゃん付けで呼ばれた人は、またしても狼狽えて叫ぶ。


「その呼び方は止せ!」


そう言いながらもこっちを振り返り、少し恥ずかしそうな顔を見せた。



「…プッ!」



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