鈍感ちゃん(君)を攻略せよ!
後ろで呼んでいる真翔の言葉なんか耳に入ってこなくて。
できるだけ無心で歩気進めていく。
無心じゃなきゃ、どうしてもあの光景がフラッシュバックするようで。
俺と湊さんとの差を、遠慮なく突きつけられた気がした。
こんな感情、知らなかった。
今まで感じたことのない感情。
全部、あいつの…真白のせいだ。
そこまで考えて、後ろで叫びながら走ってくる奴を待つために足を止める。
今まで、毎日話すのが当たり前のように感じていていたけど。
それを、逆に考えて見たら?
『お前なっ……置いて行くとか、酷すぎるだろ⁉︎』
全速力で走ったのか、激しく息切れしながらそう言った真翔を見て、口角を上げた。
『真翔』
『あ?』
『……押してダメなら引いてみろ…だよな』
『は……?』
間抜け面をして言葉を漏らした真翔の言葉に返すことはせず。
頭の中で、真白を振り向かすための作戦を練る。
諦めるなんて、俺らしくない。
どんな手を使っても、振り向かせてやるから。
『……覚悟しろよ』
真翔にも聞こえないほど小さくそう呟いて、口角を上げた。