鈍感ちゃん(君)を攻略せよ!
side_fuka
『風花? 最近元気ないけど、どうかした?』
厨房で、いつも通りの手際の良さで注文品を作りながらそう言った湊さんを見て、手が止まった。
『……何でもないですよ?』
にっこりと笑って、止めた手を動かすと、隣でため息が聞こえて。
不思議に思って隣を見ると、手を止めた湊さんが私をじっと見ていた。
『湊さん?』
『全然大丈夫そうに見えないけど。
……無理だけはしないでよ』
まるで、全てお見通しとでも言いたげな瞳で私を見つめる湊さんから、目を反らせなくなる。
無理って、何?
私、今無理してるの…? 無理してるように見えるの?
だとしたら、どうして…?
どうして、なんて頭では考えて見るけど、自分の中で答えははっきりと出ていて。
『本当に大丈夫ですよ、湊さん!』
でもまさか…湊さんに、斎藤くんの事で悩んでるなんて言えるわけがない。
いつからか分からないけど、学校でもバイトでも、斎藤くんに避けられるようになったのは最近だ。
学校では、みっちゃんと話すために来た中嶋君にくっ付いてるくせに、私とは目を合わせてくれない。
それに、廊下ですれ違っても、目があっても反らされる。
バイトでも、まるで他人行儀の扱いで、もちろん家まで送ってくれるなんてこともなく。
1人で帰るのは危ないと言って、今は湊さんが車で送ってくれている。
斎藤くんのこの行動が、結構自分に効いている事に驚いた。