鈍感ちゃん(君)を攻略せよ!
放課後だからか、沢山の生徒とすれ違いながら靴箱に向かう間にも、口喧嘩が続いて行く。
『……斎藤くんのガキ』
『お前には言われたくないな』
バイト先に向かう間も、斎藤くんの言葉に喧嘩を買って、私も売り返して。
斎藤くんもそれに乗る…なんて繰り返しながら、ワーワーと騒ぎ立てて裏口から店に入った。
『元気だね、風花』
『あっ、湊さん! こんちにはッ‼︎』
笑顔で迎えてくれた湊さんに、大人しく頭を撫でられる。
ヤッパリ湊さんって大人だ…。
なんだろう…こう……マイナスイオンじゃ無いけど、癒されるし落ち着く。
『……行くぞ』
『わっ、斎藤くん引っ張らないでよ』
斎藤くんに腕を引かれて、従業員の更衣室まで引きずられながら移動した。
『斎藤くん、そんなに強く引っ張ったら、私の腕外れるからね?』
少し赤くなった腕を摩りながらブツブツ文句を言った私を、斎藤くんが一睨みした。
…………え?
『お前さ、鈍角すぎてむかつく』
何、いってるの、斎藤くん。
さっきまで笑ってたのに、何故か不機嫌になった斎藤くんを見て、足が動かなくなる。
『少し、考えてみれば?』
何を…? なんて聞く暇もなく。
パタンッと、斎藤くんが出ていった音が、静かな更衣室に響き渡った。