鈍感ちゃん(君)を攻略せよ!
きっと、斎藤くんの一時期の気の迷い何だと思う。
『俺、本気だから』
そんな私の考えなんてお見通しとでも言うように、私より先にそう言った斎藤くんに、再度フリーズする。
『……嘘、だよね?』
いや、嘘だなんて言って欲しくないけど。
それでも、信じられなくて。
『嘘じゃねえ。
……俺は、お前が好きだよ。風花』
初めて見たような笑みを浮かべながらそう言った斎藤くんに、思わず今度は私から抱きついた。
今はもう、恥ずかしいとか嬉しいとかそういうのじゃない。
『今…ッ、名前‼︎』
『やっと呼べた。
他の奴は名前で呼んでるのに、俺だけ名字で呼ぶのは…嫌だったんだよ』
そう言った斎藤くんが、私を抱きしめる力を弱めて片方の手を私の頭に乗せる。
『……返事、聞いてもいいか?』
いつもは少し強引で俺様なくせに。
そう聞いてきた斎藤くんの声と、私の頭を撫でる手がぎこちなくて。
思わず、声出して笑ってしまった。
『……笑うな』
『だって…斎藤くん、いつもと違うから』
『不安なんだけど、これでも』
不安、と言った斎藤くんは、言葉とは反対に私の頭を撫でていた手を止めて頬をするっと撫でる。
『……不安そうに見えないけどね?』
『うるせえ…速く、返事』