鈍感ちゃん(君)を攻略せよ!
恋愛経験ゼロの私に、耐えきれるはずがないよ。
『風花…名前、呼べない?』
少し悲しそうに目を伏せた斎藤くんを見て、ギュッと目を閉じる。
大丈夫。今なら、言える。
『……す、ばる…』
消えていきそうな声だった事なんて自覚してるけど。
イキナリ静まり返った空間ではやけに大きく聞こえて。
返事の代わりとでも言うように、斎藤くんが私を抱きしめる力を強めた。
『……もう1回』
『…昴』
今度はさっきよりもはっきりと。
斎藤く……昴の目を見て、笑みを浮かべながら名前を呼ぶ。
葵とか、祐希君とか、湊さんとか。
他の人を名前で呼ぶのとは全然違って。
呼ぶだけで、好きだとこんなにも自覚させられるなんて思ってなかった。
『風花、好きだ』
『……不意打ちはずるい』
甘く、優しい。
そんな昴の言葉と表情に、自然と私も同じ言葉を呟いていて。
『…やっと捕まえた。
なぁ、もう我慢できないんだけど』
『何を言ってる……んっ⁉︎』
気づいた時には目の前に昴のドアップがあって。
唇が、あったかくて。
キスしてるんだ…なんて、頭では冷静に考えてるけど。
『……真っ赤』
『だから、不意打ちはずるい』