鈍感ちゃん(君)を攻略せよ!



『斎藤君。
折角いつものケーキ作ったんだから、忘れないでよ?』


『……サンキュ』




なぜか、斎藤君が家まで送ってくれるのが日課となっていて。
歩きながらケーキの入った箱を斎藤君に渡すと、お礼を言いながら斎藤君が口角を緩める。




『私、斎藤君の笑った顔、好きだよ』



そう言ってニコッと笑みを浮かべた私を見て、斎藤君が慌てて背中を向けた。


今のって、背を向けるところじゃないよね?


私結構勇気出して言ったんだけどなぁ。


斎藤君の笑った顔が好きなのは本当の事だし、ポロっと出てしまったんだから仕方ない。



『お前、たまに凄いこと言うよな』



『そうかな?』


復活したのか、既にケーキをほおばり始めた斎藤君の言葉にそう返すと、呆れたような視線を向けられる。



『美味い…』

『本当? ありがと!』



ケーキを食べ終えた斎藤君が、カバンの中に潰した箱を押し込みながらそう言う。


素直に、ケーキを褒められるのは嬉しい。
湊さんのレシピだし、私だってたくさん試作品作って練習したから。



ありがたい事に、実験台にはいつも、みっちゃんと斎藤君と中嶋君がなってくれていた。



『俺は、お前のケーキ好きだな』


『えっ…あ、ありがとう』



さっきの仕返しとでも言うようにそう言って、珍しく悪戯な笑みを浮かべた斎藤君に、顔に熱が集中するのを感じる。



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